超特殊ゴム ノルボルネンゴム

超特殊ゴム ノルボルネンゴム

ポリマー

化学構造

ノルボルネンを開環重合することで、五員環が二重結合を介して連なった構造のポリノルボルネンが得られます。その分子量は300万以上にも及び、常温では硬質な高分子です。ポリノルボルネンのガラス転移温度は37℃程度ですが、プロセスオイルや樹脂とブレンドすることで、Tgやムーニー粘度の異なるさまざまなポリマーを得ることができます。一般的に、100部(自重)以上、プロセスオイルを添加したものは、柔軟性と弾性に富むことで、ノルボルネンゴムとして用いられます。

 

ポリノルボルネン・ノルボルネンゴムの歴史

ポリノルボルネンは1968年 に発明されました。1976年にフランスCdF-Chimie社によって、Norsorex(ノーソレックス)のブランド名で商業化され、世界のゴム業界に知られています。

1980年代に日本ゼオン社がNorsorexの輸入販売を始めたことで、国内のゴム業界にも知れ渡るに至りました。Norsorexブランドは、CdF-Chimie社からArkema社等を経た後、2020年からはオーストリアのGerhard Karall Engineering社が製造しており、2023年秋から同社の新プラントが稼働予定です。

 

ポリノルボルネン・ノルボルネンゴムの特徴

ポリノルボルネンは、汎用的な高分子とかけ離れた構造であり、様々な特異な性質を有します。

また、ポリノルボルネンの油展品であるノルボルネンゴムも同様に、種類が多いゴム材料の中でも”異質”と言えるほど、ユニークなゴムです。

・高い親油性

ポリノルボルネンは高い吸油性を持ち、例えば重油であれば自重の10倍ほど、塩素化パラフィンでは最大35倍に吸油(膨潤)が可能です。

・樹脂としてのユニークな性質

プロセスオイルを含まない樹脂は、形状記憶性を持つことができると知られております。

・高減衰

ノルボルネンゴムは高い減衰性を有することが知られています。減衰性を活かすことで、制振と防音の用途に用いることができます。Gerhard Karall Engineering社では、1200種以上のコンパウンドを試作し、下記のレンジで使用が可能なコンパウンドの調整が可能です。

・衝撃吸収性

最大で99%もの運動エネルギーを熱エネルギーに変換可能です。ポリノルボルネンを用いたプロテクターは、プロテクター規格EN 1621-1EN 1621-2EN 1621 -3.に準じたものあります。

 

・高粘性

特殊なプロセスオイルを使用することで、非常に低い損失係数G”/G’(最低0.05)のコンパウンドを製造することが可能です。

 

ポリノルボルネンの用途例

 

・化学的親和性を活かす

高い吸油性を活かし、油の固形化・排水処理・溶液分離や洋上でのタンカー事故等に際しての油による海洋汚染を防ぐ吸油材として機能します。化学修飾を加えたポリノルボルネンのポリマーはガス分離膜としての応用が研究されています。

 

・力学特性を活かす

高度に油展したノルボルネンゴムは、高い減衰性を持ち合わせており、制振動ゴムとして用いることが可能です。また、ノルボルネンゴムは、スタック性と低転がり抵抗を持ち合わせており、サイクリングタイヤ・レース用タイヤ・省エネタイヤ・トランスミッション・システム等での応用が期待されます。ラジコンタイヤの分野では、最も優れたゴム材料の一つとしてよく知られています。

ノルボルネンゴムを用いて作られるイアーチップは、衝撃吸収性により長時間の装着をしても疲れにくい特長があります。

 

 ソフトマテリアルに限らず、高い衝撃吸収性を用いたプロテクターや、弾性減衰の少ない衝撃波吸収材といった強さを活かした材料にも用いられます。

オーストリア Gerhard Karall Engineering社 Norsorexの紹介

ポリノルボルネンゴム(Norosorex)

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