化学抵抗性と難燃性を兼ね備えたPTFEパウダーについて解説!

化学抵抗性と難燃性を兼ね備えたPTFEパウダーについて解説!

添加剤

化学工業の進歩は、私たちの生活を便利で快適なものに変えてきました。その中心的役割を果たしているのが、フッ素を含む高性能な樹脂であるPTFEパウダーです。

本記事では、その魅力に迫るとともに、特性、種類、製造方法、そしてその重要な役割について詳しく解説します。これらの情報を知ることで、PTFEパウダーがどのようにして私たちの生活と産業に貢献し、どのように選定し購入するべきなのかを理解し、今後の市場動向に備える手助けになることでしょう。

PTFEパウダーとは?

PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)パウダーは、一般的に優れた化学安定性、非粘着性、そして優れた電気絶縁性を持つことで知られています。これらの特性は、高温・低温の両方の条件で維持され、多くの溶剤や化学物質に対する耐性を示します。さらに、摩耗抵抗性や難燃性も持つため、多岐にわたる産業で用いられています。

化学構造を見ると、PTFEは二重結合で連なった炭素原子の鎖にフッ素原子が結合した構造をしています。フッ素原子は強力な結合を形成し、化学反応を防ぎます。このフッ素の化学結合の強さが、PTFEの化学安定性や非粘着性をもたらす主要な要素となります。また、この構造がPTFEの絶縁性や難燃性をもたらします。

これらの特性は、PTFEパウダーがエンジニアリングプラスチック、潤滑剤、防錆剤、電子部品、ガスケット、シール材料、難燃性被覆材料などとして使用される主な理由です。特に、その化学的耐久性は酸、アルカリ、オイルなどほとんどの化学物質に対する優れた抵抗力を示します。また、その非粘着性は、食品加工機器や調理器具の非粘着コーティングとして利用されます。

優れた特性

PTFEパウダーは、多様な優れた特性により幅広い用途に活用されています。

1つ目の主要な特性は、高温特性です。PTFEは極めて高い温度でもその性能を保つことができ、また低温でも使うことができます。これは航空機の部品や調理器具など、高温環境で使用される製品において重要な特性となります。

2つ目は化学安定性です。フッ素は非常に反応性が低いため、PTFEはほとんどの化学物質に対する強い耐性を持ちます。これにより化学工業や薬品工業で広く利用されています。

3つ目は摩耗抵抗性です。PTFEは耐摩耗性が高く、ワックスと同様に潤滑剤として使用することができます。これにより、メカニカルパーツやインキの摩耗を減らし、その寿命を延ばすことができます。

4つ目は難燃性です。これらはフッ素との強力な結合によりもたらされます。フッ素の存在によりPTFEは難燃性を持ち、火災リスクのある環境でも安全に使用することができます。

航空産業への応用

PTFEパウダーの歴史

PTFEは1938年にデュポン社の化学者、ロイ・J・プランケットによって偶然発見されました。発見当初はその特性が理解されず、PTFEはあまり注目されませんでした。しかし第二次世界大戦中に、この物質が核分裂物質の生産に必要なウラン濃縮プロセスにおいて不可欠な材料であることが発見され、大規模な生産が開始されました。

戦後には非常に優れた特性から、航空宇宙から食品加工、エレクトロニクスまで非常に幅広い産業で利用されるようになりました。また今日ではさまざまな形状やサイズに加工されており、特にパウダー形状のものは、インキ・塗料、潤滑剤、電子部品などに広く利用されています。

PTFEパウダーの生産

PTFEパウダーの製造方法は、エマルジョン重合と呼ばれる一連の化学反応を経て行われます。このプロセスでは、テトラフルオロエチレンと水を混合し、高温と高圧下で反応させます。これによりテトラフルオロエチレンはポリマー化し、PTFEエマルジョンが生成されます。このエマルジョンを遠心分離により固形物に分離し、乾燥させて粉末化します。

また、マイクロパウダーなど特定の用途に使用されるパウダーの場合、さらなるプロセスを経ることがあります。これには、平均粒径を制御するための粉砕や分類、または特定の物性を付与するための特殊な加工が含まれます。

電子線照射によるPTFEパウダーの製造方法は、PTFEスクラップ/端材などを加工する方法の一つです。電子線は、高エネルギーの放射線であり、照射することで材料の化学構造を変化させることが可能です。以下に、この方法の一般的なステップを示します。

① PTFEパウダーの準備: 最初に、粉砕機または類似の装置を使用して、原料のPTFEを微粒化します。微粒化されたPTFEパウダーを、照射前に適切に分散・乾燥させます。
② 電子線照射: 準備したPTFEパウダーに電子線を照射します。電子線照射により、高エネルギーの電子線がPTFEの分子に衝突し、化学的結合を壊すことでPTFEの分子量を低下させます。
③ 再微粉化: 必要に応じて、照射後のPTFEをさらに粉砕・分散し、求められる粒度のパウダーに仕上げます。
④ 品質検査: 最後に、生成したPTFEパウダーの品質を確認するために、各種の検査を行います。これには、粒子径、粒度分布などの検査が含まれます。

電子線照射によるPTFEパウダーの微粒化において、照射の条件(例:電子線のエネルギー、照射時間、照射環境)を変化させることにより分子量を調整することが可能です。そのため、特定のアプリケーションに最適なパウダーを製造するためには、照射条件を適切に制御することが重要です。

環境への影響と対策

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、電子線照射によるPTFEパウダーの製造工程にて、空気中の酸素と一部のPTFEが反応することで副生物として生成されます。しかし、PFOAは人体や環境への影響が懸念されており、その使用や放出は世界中で厳しく規制されています。
PFOAは持続性有機汚染物質(POPs)の一つであり、自然環境では分解が非常に遅く、生物に蓄積し易いという特性があります。人体に摂取された場合、半減期が非常に長く(2~4年)、体内に長期間残留します。さらに、発がん性や免疫系への影響、肝臓への毒性など、健康への悪影響が報告されています。
このような理由から、PFOAやその関連化合物の使用や放出は、多くの国と地域で規制されています。例えば、ヨーロッパ連合(EU)では、PFOAとその塩、およびPFOA関連化合物の製造、販売、使用が2020年以降禁止されています。また、アメリカ環境保護庁(EPA)もPFOAの規制を進めており、多くの企業が自主的にPFOAの使用を止めるという取り組みを行っています。
弊社取扱の米国/Shamrock Technologies社のPTFE製品に関しましては、PFOA含有量について厳しい管理を行っており、全ロットのCOAに基準値の記載がございます。詳しくは弊社までお問い合わせ下さい。

市場の現状と未来予測

PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)パウダーの市場は、その優れた性能と幅広い用途により、近年持続的に成長を続けています。自動車、航空、電子、建築、医療といった様々な産業での需要が増加しており、これらの産業の成長に伴い、PTFEパウダーの市場も引き続き拡大すると予測されています。

しかし一方で、上記のPFOAや微小プラスチックによる環境問題が世界的に懸念されており、これに対する対策が急務となっています。また原料となるフッ素を豊富に含む鉱石の資源量には限りがあり、将来的な供給安定性も課題となっています。

選定と購入

選定する際には、必要となる特性(例えば、高温特性、化学抵抗性、摩耗抵抗性等)を明確にする必要があります。また製造メーカー、製造プロセス、原材料等によって、品質には差があります。評価や試験データを参照し、必要な品質を確保できる製品を選ぶことが重要です。

製品の品質はもちろん、製造者の信頼性も重要な選定基準となります。製造者が持つ技術力、品質管理体制、サプライチェーンの安定性等を考慮に入れ、信頼できる製造者から購入することをおすすめします。

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