エポキシ化天然ゴムの魅力と用途について解説!

エポキシ化天然ゴムの魅力と用途について解説!

ポリマー

〇エポキシ化天然ゴムの化学的構造

エポキシ化天然ゴム(ENR: Epoxidized Natural Rubber)とは、エポキシ基を導入したものです。エポキシ基が導入されることで高極性化し、天然ゴムに無い性質・特性を示します。

 主にエポキシ化率25%とエポキシ化率50%の製品が市場で用いられております。

〇エポキシ化天然ゴムの合成

通常の天然ゴムと同様に、パラゴムノキから採取されたフィールドラテックスを主原料とします。安定化したラテックスに過酸を反応させることで、天然ゴムを構成するシスポリイソプレンのジエン部分(二重結合)にエポキシ基を導入します。

 

 〇エポキシ化天然ゴムの特性

・耐油性の向上

エポキシ基の存在により、ENRは天然ゴムに比べて、油や低極性の有機溶剤に対する耐性が向上し、膨潤や油による脆化が起こりにくい特長があります。

・樹脂改質

NRに限らず、PVC、NBR、EPDM等に良く混ざります。特にPVCの改質用途での利用が検討されています。

・フィラー相溶性

高極性化に伴う相互作用によって無機フィラーへの親和性が向上します。シリカが天然ゴムに混ざりづらいのに対し、例えばENRを極性の高いフィラーを高充填させるための “相溶化剤” として用いることが可能です。ENRを用いることは、フィラー分散性の高いコンパウンドを得る為の一つの手段と言えます。

・機械的性質

具体的な数値は製品や製造条件によりますが、一般的にエポキシ化天然ゴムは天然ゴムに対して、引っ張り強度が10MPa以上、引裂き強度が25N/mm以上が向上した、という報告があります。延伸に対しては、天然ゴムと同様に、結晶化をすることで、高い引張強度を示します。高い機械強度を持ったゴムはタイヤ、ベルト、ホースなどの高負荷環境下での用途で用いられます。

また、振動減衰性が高いことから、制震部材の材料としても用いられています。

耐摩耗性や耐久性のアップのためタイヤ等にも使われています

上記の性能に加えて、ウェットグリップ性のある冬用タイヤ(住友ゴム工業様特許)や、低転がり抵抗を活かしタイヤでも用いられています。

 ・ガス透過性の低下

エポキシ化天然ゴムは、エポキシ化率の上昇に伴い、分子の運動性が下がり、ガス透過率が低下します。

 

 

 〇 サステナビリティへの貢献

昨今、天然ゴムは持続可能な資源であるという観点で再注目を浴びています。天然ゴムは、安価な天然由来の資源でありつつ、非常に高い弾性を持つという特徴があります。その一方で、天然ゴムは合成ゴムに比べて、耐熱性や耐油性、引き裂き強度と等の性質で劣っている部分があり、残念ながら、天然ゴムが工業的に用いられる環境は限られています。

変性天然ゴムの一種であるエポキシ化天然ゴム(ENR)は天然ゴムに無い物性・特性を持つことで、従来天然ゴムが用いることが出来なかった用途・環境で使用を可能にします。また、自然界での分解が可能である材料であるという観点からも、環境負荷が小さい材料として認知されています。

 〇 エポキシ化天然ゴムの市場

エポキシ化天然ゴム(ENR)のサプライヤーは世界にごく限られています。しかしながら、ENRの用途は、タイヤ、接着、人口皮革、ホース、靴底等、幅広く広がっています。天然資源への再注目を背景に、ENRの需要は年々増加してます。

 これらのニーズに応えるべく、タイのMMG社では、ENRの生産能力を年々増強しており、2023年には600 MT/年を超える予定です。

 タイ MMG社 ENRの紹介

https://chembase-st.com/product/352/

 

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