なぜサステナブル材料を検討するのか

コラム

近年、多くの企業が二酸化炭素(CO2)排出量の抑制に向けた取り組みを強化しています。これは、パリ協定やTCFD宣言を経たGHG(温室効果ガス)排出規制の影響を受けているためです。日本政府は2030年までにGHG排出量を2013年比で46%削減を目指しています。本記事では、これらGHGを取り巻く環境と、それらの環境変化に対応した環境対応材料についてまとめます。

 

パリ協定とTCFD宣言

パリ協定は、2015年に採択され、2020年から本格的に運用が開始されました。この協定の主な目標は、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることです。各国はGHG削減に向けた「自国が決定する貢献(NDC)」を策定し、5年ごとに更新することが求められています。

TCFDとは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略です。TCFDの主な目的は、企業が気候変動に関連するリスクと機会を開示するための枠組みを提供することです。

パリ協定の採択を受けて、TCFDG20の要請を受けて201512月に金融安定理事会(FSB)によって設立され、20176月に報告書を公表しました(TCFD宣言)。企業に対して以下の4つの項目(1.       ガバナンス(Governance)、戦略(Strategy)、リスク管理(Risk Management)、指標と目標)について開示することを推奨し、投資家やステークホルダーは企業の気候変動対応を評価できるようになりました。

TCFDは国内外で多くの企業が取り入れておりますが、とりわけ、日本のプライム企業のほとんどはTCFDに対しての取り組みを行っています。その背景には、金融庁と東京証券取引所が合同で取りまとめた「上場企業統治指針」コーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に上場している企業は、TCFD等の枠組みに基づくサステナビリティに対する取り組みを要請していることが挙げられます。

TDFDに取り組む企業でも、設定した目標を達成するために、エネルギー、素材、サプライチェーン等の様々な側面から検討が進められております。

 

GHG排出量の管理

 米国のシンクタンク世界資源研究所(World Resources Institute: WRI)と、持続可能な開発を目指す企業のCEO連合である持続可能な開発のための世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development: WBCSDが主体となり、1998年に温室効果ガスの排出量を算定・報告するための国際的な基準としてGHGプロトコルを作成しました。

GHG排出量は、スコープ1、スコープ2、スコープ33つのカテゴリーに分類されます。

  • スコープ1: 企業が直接コントロールできる排出(燃料の燃焼、工業プロセスなど)。
  • スコープ2: 購入したエネルギー(電力、熱、蒸気など)から生じる間接排出。
  • スコープ3: 企業の活動によって間接的に関連する広範な排出(原材料の調達、製品の使用、廃棄など)。

スコープ1の削減は経済活動の制約に繋がる為、容易で無いとされ、またスコープ2からのGHG削減の取り組みは、再生可能エネルギーの確保できない限り実現しません。

一方で、スコープ3は、サプライチェーン全体での排出量を含むため、企業が環境対応素材を使用することで、二酸化炭素の排出量を減らすことが可能なケースがあります。

 

環境対応製品

 GHG削減のニーズに応え、様々な環境対応製品が世の中に出ています。例えば、Brisil社が製造する湿式シリカは、原料のシリカをもみ殻から抽出することで、低エネルギーでの生産を実現しています。

https://chembase-st.com/media/%e3%82%82%e3%81%bf%e6%ae%bb%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%82%ab/

 

 ARLANXEO社のEPDM Keltanシリーズには、Keltan ECO という環境対応製品があります。

Keltan ECO Bには、サトウキビ由来のエチレンを用いて生産されます。

Keltan ECO BC は、原料がバイオマスナフサであるエチレンを用いて生産されます。

Keltan ECO BKeltan ECO BC は、共に、ISCC認証を取得したブラジル工場で、マスバランス方式を用いて生産されます。従来のKeltan に対して、二酸化炭素の排出が少ないながら、物性に全くの差がありません。

https://chembase-st.com/product/keltaneco/

 

 Lignum社では木の幹を用いたバイオマスフィラーを製造しています。木の幹は、リグニンを主成分とします。酸による処理を経て分子量を短くしたリグニンは、ゴムや樹脂の充填剤として用いられます。

海洋プラスチックの再利用も進んでいます。海洋に流出したプラスチックは海洋汚染の原因となります。東南アジアから回収したプラスチックを、未使用材料に遜色のない高品質な樹脂として再利用することが可能です。

https://chembase-st.com/product/lignum/

#tide ocean material

 

GHG排出スコープ3削減へのアプローチは、素材の二酸化炭素の排出量の低減だけではなく、廃棄物を減らすことでの実現も可能です。BGS社のTherpolは、天然ゴムをベースにした新規樹脂の改質剤&相溶化剤です。

リサイクル不可能なプラスチックにバインダーとして機能します。例えば、マルチレイヤフィルムやミックスプラは複数の樹脂を含んでおり、一般的にマテリアルリサイクルがはできません。Therpolは天然ゴムを含んだコンパウンドであり、様々な材料に対しての親和性が高いという特徴があります。Therpolを含めてコンパウンディングすることで、リサイクルできない廃棄物を、構造材料として再利用することが可能です。

Therpolによるリサイクルが可能な対象は、樹脂に限らず、様々な種類のフィラー、複合材料も含みます。例えば、樹脂、繊維、接着剤等を含む自動車の天井材は、一般的にリサイクルが出来ないと認識されていますが、Therpolを用いたコンパウンディングにより、成型可能な構造材料としての再生が可能です。

https://chembase-st.com/product/therpol/

 

chembaseでは、様々な環境対応材料を紹介しております。

GHG排出量の削減と、循環型社会の実現への貢献の為に、サステナブル材料のご検討はいかがでしょうか。

https://chembase-st.com/product_category/eco-friendly-products/

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